夕暮れの灘区へ──祭りの気配を探して
5月2日の夕方。向かったのは神戸市灘区、河内國魂神社のだんじり祭り。
阪神西灘駅で降りると、駅前は普段通りの静かな空気だった。しかし、少し歩き始めると、遠くから微かに鳴り物が聞こえてくる。
「ああ、今日は祭りの日なんだな」
そう思わせる独特の高揚感がある。
西灘駅から水道橋商店街方面へ。商店街には祭り装束の姿をした人も増え始め、上野の法被を着た人がちらほらと視界に入る。前方に目を向けると今にも動き出しそうなだんじりが視界に入ってきた。待ちに待った神戸の祭りウィークの突入の瞬間だ。
【上野のだんじり】

三台そろう河内國魂神社──それぞれの個性が面白い
河内國魂神社へ近づくにつれ、空気が変わっていく。
鳴り物の音。掛け声。観客のざわめき。
住宅街の中に、祭りだけが持つ熱気が広がっていた。
上野のだんじり──夕暮れとのコラボが最高
この日集まっていたのは、上野・畑原・五毛の三台。それぞれ雰囲気が違っていて面白い。
まず目に入ったのは上野のだんじり。提灯に灯りが入り始めた時間帯で、夕暮れの空との相性がとても良かった。
神戸のだんじりは岸和田系ともまた違う空気感がある。どこか街との距離が近い。坂の多い土地柄もあってか、曳行の緊張感にも独特のものを感じる。
【上野のだんじり夜Ver】

畑原のだんじり──「街が動く」感覚
畑原のだんじりが動き出すと、一気に観客が集まり始めた。
狭い道幅の中を、絶妙な間合いで進んでいく。前後左右、曳き手も見物客も互いに空気を読みながら動いている。
祭りというより、「街そのものが動いている」感じ。
こういう空気感は現地でしか味わえない。
鳴り物が身体に響く。太鼓の低音は、耳で聞くというより胸に来る。気づけば自然と笑みが出る。
鳴り物出身の私の癖だ。
【宮入前の畑原だんじり】

夜のだんじりには独特の情緒がある──五毛の灯り
そして五毛。
夕暮れから夜へ変わる時間帯、提灯の灯りが一段と映えてくる。昼間の祭りとは違い、夜のだんじりには独特の情緒がある。
提灯の揺れ。木の軋む音。曳き手の掛け声。
神社に向かう坂道はかなりの賑わいだったが、不思議と騒がしいだけではない。地元の人たちが自然に集まり、自然に笑い、自然に祭りを支えている。そんな温度感が心地良かった。
神戸の祭りは「見せる祭り」というより、「街に根付いた祭り」という印象が強い。
【宮入前の五毛だんじり】

帰り道──耳の奥に残る鳴り物
しばらく神社までの道中をだんじりとともに坂を上る、鳴り物を聞きながら祭りの雰囲気に浸りながら時間を過ごした。GWということもあり、人出はかなり多かったが、それでもどこか穏やかだった。
夜が深くなるにつれ、少しずつ帰る人も・・・いない。ここは宮入後にまたすぐだんじりが各小屋へと帰っていく。
みんなそれについて帰っていくからだ。
しかし私は終電が迫っていたので、神社を背にして歩き始める。最初はすぐ後ろから聞こえていた鳴り物も、少し歩くごとに遠ざかっていく。
賑やかな声。太鼓の音。提灯の灯り。
それらが少しずつ街の奥へ山の奥へと溶けていく。
祭りの帰り道特有の、あの少し寂しい感覚。
さっきまで確かにそこにあった熱気が、ゆっくり日常へ戻っていく。水道橋商店街を抜け、西灘駅へ向かう頃には、聞こえる音もかなり小さくなっていた。
それでも耳の奥には、まだ鳴り物が残っている。
GWの神戸。良い祭りの夜だった。
→ 後編へ続く



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